第1章 1.法律の機能
2020年08月17日 2022年07月12日
以下には、国政におけるコロナ対策が心もとない状況下で「そもそも法律とは何か」ということを、私が上梓した本「庶民派弁護士が読み解く法律の生まれ方」(日本地域社会研究所)を分節したいと思います。
第1章〝法律〟というものの氏素姓
1.法律の機能
「法律」というのは勿論、人間ないし国民が社会的存在として生きていく為の”ルール(指針)”を示すものです。
法体系(一口に法体系としましても段階があります)を俯瞰すると、効力の優先順位としては、国際間の条約、(各国の)憲法、法律、行政府の政令、地方自治体の条例ということになろうかと思います。
もっとも、条約と憲法の優先順位の理解については見解の対立があり、憲法の方が優先する、という説もあります。
「条約」というのは国家間の取り決めですね。日本では古く大老井伊直弼が幕末に米国と交わした「日米修好通商条約」であったりします。
この条約締結に関しては、結局、”安政の大獄→桜田門外の変”にまで至るのですから、そのことだけからしても重大事です。
次に、「憲法」というのは国の基本法ですね。「不毛の議論」と言うべきかもしれませんが、条約が憲法に優位する、と学者は言っています。
いずれにしろ、基本的に法律以下の”指針”は憲法に反せない、ということになります。
ところで、「政令」というのは余り耳に馴染みがないかもしれませんが、法律が行政府に細かい現場レベルの規則を定めることを委任した結果、行政府により法律に抵触しない範囲で、あるいは、法律を詳細に施行する為に定められ発令されるルールです。
そして、条例は、地方自治体が国の法律、政令に反しない限りで自治的に制定することが許される規範です。
要するに、法体系は国家と国民を秩序付ける為に人為的に作られるものです。
結局、国民はこのような諸々の法規範により規制されている訳ですが、「法律」は、あえて言えば法体系のうちの一部です。
しかし、ここでは法体系のうち、一番我々にとって身近ではないかと思われる法律の何たるかについて話をすすめてみようと思います。
ご承知のとおり、法律は日本でいえば、基本的に国会を構成する衆・参両院で審議されて成立するものです。法律の人的適用範囲は基本的には”全国区”です。全国民が一律にそれに従う、ということが原則なのです。
一部の”時限立法”(一定の期間、例えば、平成〇年から同〇年までの間だけ有効、とされる法律のことを言います)を除けば、終期を殊更定めない限り、あるいは、廃止・改正されない限り、機能し続けます。
・・・つづく